法人成りのメリット・デメリット及び資産や負債の引継ぎ方法について
法人成りのメリット・デメリット及び資産や負債の引継ぎ方法についての記事をご紹介します。
法人成りするメリット
①社会的信用度が高くなる
一般的に、法人は個人事業主に比べて社会的信用度が高いとされています。これは法人の場合、登記簿謄本を通じて商号、所在地、成立年月日、目的、資本金、役員などの重要情報が公開され、さらに法人の決算書や確定申告書などが個人事業主のものに比べて情報量が多いためです。そのため、法人は従業員の採用や金融機関からの借入などにおいて有利になる可能性があります。
②決算月を自由に設定できる
個人事業主の場合、所得税の申告期限が毎年3月15日に設定されており、そのため年末年始の多忙な時期に確定申告作業を進める必要があります。一方で、法人に転換すると決算期を自由に設定できるため、事業年度中の閑散な時期に決算申告を行うことができます。
③経費の幅が広がる
④欠損金の繰越控除期間が長くなる
⑤設立後2年間は消費税の免税事業者になれる場合がある
法人設立時の資本金が1,000万円未満である1期目、または期首の資本金が1,000万円未満でかつ以下の条件のいずれかを満たす2期目の場合に、消費税が免除されます。
a:特定期間の課税売上高が1,000万円以下の場合
b:特定期間の給与等支払額の合計が1,000万円以下の場合
c:設立1期目が7ヶ月以下の場合
法人成りするデメリット
①設立費用が発生
②赤字になっても税金を支払う
③会計、事務手続きが煩雑になる
引き継ぐ資産の処理方法について
①事業専用の預金口座
法人名義の口座が開設されるまで、仮に法人設立日の預金残高を使用することは許容されます。この場合、次の仕訳処理を行います:「(借方)普通預金xxx円 (貸方)役員借入金xxx円」。この仕訳は、法人としての預金(資産)が増加し、同時に代表者からの借入金(負債)も増加したことを意味します。法人名義の口座が開設されるまで、このような仕訳処理を行って資金を管理することができます。
②事業と私用の兼用預金口座
こちらを引き継ぎしてしまうとその後の処理(事業と私用の取引を分ける処理)がかえって大変になってしまうので、引き継ぎしないことを推奨します。
③売上債権
個人事業主としての売掛金は、通常、法人に引き継がれず、個人で回収されます。個人から法人へ債権を譲渡するには、債務者から同意を得る必要があり、その手続きは煩雑です。そのため、売掛金は法人設立後も引き続き個人で回収することが一般的です。
④固定資産
土地、建物、備品などの固定資産を引継ぐ場合、通常は原則的にはその時点の時価で売却したものとして引き継ぎます。ただし、実務上では簿価で引き継ぐことも許容されています。ただし、車両などのように時価が明らかに高い場合は、通常は時価での受け入れとなることが一般的です。
⑤棚卸資産
通常、、個人事業主から法人への固定資産の売却においては、通常の販売価格で取引されることが原則です。しかし、所得税法上では、通常の販売価格の70%までの金額で売却された場合には値下げが認められています。このような場合、所得税法に基づき、売却価格の70%までの金額が売却益として課税されます。
引き継ぐ負債の処理方法について
通常、個人事業主から法人に移行する際、売掛金や未払金については個人で回収や支払いを完結させることが一般的です。これらの債権や債務は個人との関係にありますので、法人への引継ぎは通常行われません。一方で、金融機関からの借入に関しては、法人がその借入を引き継ぐことが多いです。これは、金融機関との契約や借入金額が変更されるためです。通常、個人事業主と法人とで財務状況や信用度が異なるため、金融機関との取引においても法人名義に変更し、法人が新たに契約を行うことが一般的です。