いよいよ短時間労働者の社会保険適用が拡大する前に必要な対応を徹底解説
改正前の短時間労働者要件の概要
改正前の社会保険における「短時間労働者」の要件 社会保険法改正前の短時間労働者の要件には、以下の4つがありました。
1) 雇用期間が1年以上に見込まれる必要があります。
2) 週に20時間以上の所定労働時間が求められます。
3) 学生でないことが条件となります。
4) 月の賃金が8.8万円以上である必要があります。
所定労働時間は、勤務規則や雇用契約書などで定められている通常の労働時間です。
法定労働時間は「1日8時間、1週40時間」となっていますので、正社員の所定労働時間が週40時間と定められている場合、週30時間以上働く場合は短時間労働者には該当せず、社会保険の適用範囲に入ります。
2022年以降の拡大適用条件と影響
2022年10月以降は企業・従業員ともに対象が拡大! 改正法の発効により、2022年10月以降、特定適用事業所(短時間労働者を除く被保険者が501人以上の企業)だけでなく、企業規模が101人から500人の企業も義務的に短時間労働者に社会保険・厚生年金保険等に加入させる必要が生じます。
さらに、2024年10月以降は51人から100人の企業にも適用されます。
また、今回の改正により、短時間労働者の要件の中で「1年以上の勤務期間」という条件が撤廃されました。
つまり、短時間労働者も一般の被保険者と同様に、雇用期間が2ヶ月以上であれば社会保険の適用対象となります。
<新たな労働時間の制約に関する4つの要件>
新たな労働時間制約によって、以下の条件をすべて満たす従業員が対象となります。
これは、常時雇用従業員の勤務時間や勤務日数が通常の従業員の4分の3未満である場合に適用されます。
1) 雇用期間が2か月以上見込まれる必要があります。
2) 週に20時間以上の所定労働時間が求められます。
3) 学生でないことが条件となります。
4) 月の賃金が8.8万円以上である必要があります。
ただし、契約上の雇用期間が2ヵ月以内であっても、実際の労働時間が連続して2ヵ月以上週に20時間以上ある場合は、3ヵ月目から社会保険の加入対象となります。
社会保険適用企業への手続きと対応
① 事業所への登録手続きが必要です。
施行日までに社会保険の適用企業である特定適用事業所になることが明らかな企業には、「特定適用事業所該当通知書」が事前に届けられます。
しかし、施行日以降に要件を満たす企業は、「特定適用事業所該当届」を提出する必要があります。
② 対象となる従業員への対応が求められます。
特定適用事業所となったら、まず社会保険の加入対象となる従業員を把握し、迅速に加入手続きを行う必要があります。
厚生労働省は、社内の準備として以下の4つのステップを示しています。
Step1
対象者の選定が必要です。
Step2
社内で周知される必要があります。
Step3
必要な書類を作成し、提出する手続きが必要です。
Step4
従業員とのコミュニケーションを取る必要があります。
展望と対応策: 法定福利費の増加への対応
増加する対象者によっては大きな負担になる可能性も考えられますので、コストがどの程度かかるのかを事前に試算しておくことが重要です。
試算には、専門の社会保険労務士と相談するだけでなく、厚生労働省の「社会保険適用拡大特設サイト」にある「社会保険料かんたんシミュレーター」を利用することもおすすめです。
さらに、週に20時間以下の労働時間で契約していても、勤務期間が2ヶ月以上になると、社会保険に加入しなければなりません。
そのため、今後は勤怠管理をきちんと行うことが非常に重要になります。
従業員の意思や自社のコスト削減など、様々な要素を考慮しながら、社会保険未加入の従業員が20時間を超えて残業しないように事前にチェックする体制を整えておくことが望ましいです。